逐条解説7~9条
第3章 動物の適正な取扱い
第1節
総則
(動物の所有者又は占有者の責務等)
第7条
動物の所有者又は占有者は、命あるものである動物の所有者又は占有者としての責任を十分に自覚して、その動物をその種類、習性等に応じて適正に飼養し、又は保管することにより、動物の健康及び安全を保持するように努めるとともに、動物が人の生命、身体若しくは財産に害を加え、又は人に迷惑を及ぼすことのないように努めなければならない。
2 動物の所有者又は占有者は、その所有し、又は占有する動物に起因する感染性の疾病について正しい知識を持ち、その予防のために必要な注意を払うように努めなければならない。
3 動物の所有者は、その所有する動物が自己の所有に係るものであることを明らかにするための措置として環境大臣が定めるものを講ずるように努めなければならない。
4 環境大臣は、関係行政機関の長と協議して、動物の飼養及び保管に関しよるべき基準を定めることができる。
1.概要
所有者又は占有者は、動物に対する責任として動物の健康と安全の保持義務、及び他人に対する責任として人に危害等加えないようにさせる注意義務を定めている。
2.対象者
動物所有者、占有者、環境大臣
3.解釈
1)第1項
(1)対象者
所有者、占有者
(2)前段と後段
前段は、動物の所有者または占有者が適正飼育をすることにより、動物の健康、安全を図ることの努力義務を定めている。
後段は、動物の所有者または占有者が適正飼育をしりことにより、動物が人の
生命、身体、財産に害を加え、迷惑となる行為をさせないようにする努力義務を
定めている。
(3)対象となる動物
人に飼われている動物である。
2)第2項
(1)対象者
所有者、占有者
(2)疾病予防義務
動物の所有者・占有者は、疾病について予防に必要な注意を払わなければならないとの努力義務を定めている。
(3)正しい知識
「正しい知識」は、一般飼育者としてのものであり、動物取扱業者や獣医師レベルのものではない。
3)第3項
(1)対象者
所有者
(2)所有者表示義務
動物が自己の所有にかかること表示する義務を定めている。
その方法としての「動物が自己の所有にかかるものであることを明らかにする措置」を環境大臣が定めている。
それによるとその目的は、「動物の盗難及び迷子の防止に資するとともに、迷子になった動物の所有者の発見を容易にし、責任の所在の明確化による所有者の意識の向上等を通じて、動物の遺棄及び逸走の未然の防止」となっている。
よって、動物が人に危害を加えたときのために、責任の所在を明確に
しておくという趣旨ではない。
⇒動物が自己の所有に係るものであることを明らかにするための措置 (PDF)
平成18年1月20日
4)第4項
(1)対象者
環境大臣
(2)基準
環境大臣が動物の飼養及び保管に関しよるべき基準を定めることができるとした。
飼養・保管のスタンダードを構築し、これに準拠して各所有者及び占有者が飼養・保管することによって適切な飼養・保管ができることを予定する。
動物の飼養及び保管に関しよるべき基準とは、次の基準が定められている。
1.家庭動物等の飼養及び保管に関する基準
2.展示動物の飼養及び保管に関する基準
3.実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準
4.産業動物の飼養及び保管に関する基準
以上の四つの基準からなっている。
⇒家庭動物等の飼養及び保管に関する基準(PDF)
展示動物の飼養及び保管に関する基準(PDF)
実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準(PDF)
産業動物の飼養及び保管に関する基準(PDF)
(動物販売業者の責務)
第8条
動物の販売を業として行う者は、・当該販売に係る動物の購入者に対し、当該動物の適正な飼養又は保管の方法について、必要な説明を行い、理解させるように努めなければならない。
1.概要
動物取扱業者は、販売に際に動物の知識に乏しい購入者に対して飼い方などの説明をすることを義務付けた。
2.対象者
動物取扱者(販売者)
3.解釈
1)説明の内容
当該動物の適正な飼養又は保管の方法についてである。
事前に販売者が知識の乏しい購入者に対して飼育・保管が適正にできるように教えることによって、購入者が適正な飼養又は保管ができるようにすることを図った。
2)必要な説明と理解
喋っただけではだめで、理解できるレベルで説明する必要がある。
3)購入者に対し
本条で要求されているのは、購入者に対してである。
購入した者が適正な飼養又は保管ができるようにすることを図った。
購入予定者に対し、購入の判断の要素として飼い方の説明をすることは本条の適用するところではない。
4)必要な説明と理解
「必要な説明」は、必要的実施義務であり、必ず説明をしなければならない。
「理解させる」は、努力義務である。
(地方公共団体の措置)
第9条
地方公共団体は、動物の健康及び安全を保持するとともに、動物が人に迷惑を及ぼすことのないようにするため、条例で定めるところにより、動物の飼養及び保管について、動物の所有者又は占有者に対する指導その他の必要な措置を講ずることができる。
1.概要
地方公共団体は、動物の健康、安全、人に及ぼす迷惑について条例を制定し、
所有者又は占有者に対して指導等ができるとした。
2.対象者
地方公共団体
3.解釈
1)条例への委任
所有者又は占有者の責務として動物の健康及び安全と人への迷惑についてどのように定めるかの条例への委任である。但し、委任なくしても地方公共団体が条例制定権を持っている
細部的なことは各地方公共団体夫々の状況に合わせた対応がなされることが好ましいこと、具体的に実施するのは地方公共団体であること、本条項ができる前に地方公共団体が条例を制定して実施して効果を収めていた事実があることからこのように定めた。
1)条例制定の内容
動物の健康及び安全を保持するとともに、動物が人に迷惑を及ぼすことのないようにするための条例を制定する。
2)指導その他の措置
地方公共団体は、動物の所有者又は占有者に対する指導その他の必要な措置をとることができることとした。
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