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逐条解説12

 

第1章 総則

(目的)

第1条    

この法律は、動物の虐待の防止、動物の適正な取扱いその他動物の愛護に関する事項を定めて国民の間に動物を愛護する気風を招来し、生命尊重、友愛及び平和の情操の涵養に資するとともに、動物の管理に関する事項を定めて動物による人の生命、身体及び財産に対する侵害を防止することを目的とする。

 

1.概要

本条は、目的規定である。

目的規定は、その法律を解釈する上で原理原則となる重要なものであるが、本法律の場合はそれらしい意図を汲む程度のことでよい。

何故ならば、前段の表現はフィーリングで思いついたことを書いたとしか考えられないからである。

何をしたいのか。

動物を愛護したいのはずなのに、「生命尊重、友愛及び平和の情操の涵養に資する」とこんなことを唱えている。これでは、動物愛護法は単なる手段でしかないものとなる構成である。

 

2.対象者

  国民全体

 

3.解説

 1)前段と後段の関係

前段と後段との関係をどのように解するか。

前段後段とも愛護に関しての定めで、後段の管理は、管理とは愛護に概念的に含まれているが、管理の重要性のために特に抜き出して明記したとあるとの解釈もある。

しかし、前段は動物の愛護に関しての定め、後段は動物の侵害防止としての管理に関しての定めであると解すべきである。

何故ならば、前段は「愛護に関する事項を定めて・・・愛護する」であるとともに、後段は「管理に関する事項を定めて・・・侵害防止」となっているからである。

また、本条では、管理とは人への侵害防止のためのものとしているが、本法律の中では侵害防止のみならず動物の利益としての適正管理(飼養)が規定されている(動物取扱業者が遵守すべき管理の方法等の細目第5条(動物の管理)等)。

本条における管理とは、侵害防止の管理と限定的に捉えているので、法規全体との調和が取れていない。

よって、本条の管理に関する考え方も適切ではない。

 

2)対象とする動物

本法律で対象とする動物とは、動物一般を指している。

正確には、前段は動物一般まで含むが、後段は人に飼われている動物が対象である。

 

3)気風を招来し

この表現からだと、法律が「気風」に入るのかと奇異に感じる方も多いと思うが、これは「動物愛護週間」などの啓蒙活動を設けることを予定してのものである。

と解する範囲のものであれば問題はないのであるが、「動物の虐待の防止、動物の適正な取扱いその他動物の愛護に関する事項を定めて国民の間に動物を愛護する気風を招来し」であるからその範囲ではないようである。

そうだとすれば、「気風」を法律の目的に位置づけたことになるが、気風を目的とする法律とはいかがなものか。

 

  4)本条全体について

   本条は、内容については付き合う必要がない。

草案作成者は、何を書いてもいいものではないことがわかっていない。法律とはそんなものではない。

或いは、草案はよかったのであるが審議の過程で壊れてしまったのかも知れない。

兎に角、この規定は駄目である。

 

  5)参考

   参考までに、目的規定の典型的なものを挙げておく。

特許法

(目的)

第一条  この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。

 

 

(基本原則)

2 動物が命あるものであることにかんがみ、何人も、動物をみだりに殺し、傷つけ、又は苦しめることのないようにするのみでなく、人と動物の共生に配慮しつつ、その習性を考慮して適正に取り扱うようにしなければならない。

 

1.概要

  動物の愛護と管理の基本的な考え方を示している。

 みだりに殺したりしないこと、共生を配慮すること、習性を考慮して取り扱うことを義務付けている。

 

2.対象者

  国民

 

3.解説

1)対象となる動物

本条の動物とは、動物一般を指している。

正確には、前段は動物一般まで含むが、後段は人に飼われている動物が対象である。

 

2)みだりに

保健所での殺処分、実験動物の必要に応じての傷つけなどを除く意味である。

 

3)前段

国民にみだりに動物を殺傷しないことを要求している。

 

4)後段

国民に共生に配慮した飼い方、習性を考慮した飼い方をするよう要求している。

動物はそれぞれの習性を持っている。

この習性を十分考慮して取り扱うことが必要であるからである。

「その習性」の「その」とは何を指すのか。

「動物」のことか、「人と動物の共生」のことか、或いはその他か、が明白でないが、動物のことであろう。

そうだとすれば、前段では「動物」を二度繰り返して特定させる表現をしているので、ここでも正確に「動物」と表現するべきである。

 

4.罰則

1)愛護動物をみだりに殺し、又は傷つげた者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。

2 愛護動物に対し、みだりに給餌又は給水をやめることにより衰弱させる等の虐待を行った者は、50万円以下の罰金に処する。

3 愛護動物を遺棄した者は、50万円以下の罰金に処する。

4 3項において「愛護動物」とは、次の各号に掲げる動物をいう。

牛、馬、豚、めん羊、やぎ、犬、ねこ、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる

その他、人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類にするもの

 

(注)対象となる動物は愛護動物とし、愛護動物の範囲を定めている。

1号に人に飼われる性質の動物を定めている。

2号に人に変われる性質の動物ではないが現実に人が占有している動物を定めている。「その他、人が占有している動物」と表現。

本条は飼い主が占有している動物を虐待した場合を予定してのものであると想定できる。

(第44条)

 

 よって、第2条の動物とは「動物一般」を指すのであるが、人に飼われていない動物をみだりに殺したとき等の場合は、第44条の罰則の適用がないこととなる。

 

2)両罰規定

法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第44条から前条までの違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。

(第48条)

 

 








                                                     
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