10条
第2節 動物取扱業の規制
(動物取扱業の登録)
第10条
動物 (哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するものに限り、畜産農業に係るもの及び試験研究用又は生物学的製剤の製造の用その他政令で定める用途に供するために飼養し、又は保管しているものを除く。以下この節及び次節において同じ。)の取扱業 (動物の販売
(その取次ぎ又は代理を含む。次項において同じ。)、保管、貸出し、訓練、展示(動物との触れ合いの機会の提供を含む。次項において同じ。)その他政令で定める取扱いを業として行うことをいう。以下
「動物取扱業」という。)を営もうとする者は、当該業を営もうとする事業所の所在地を管轄する都道府県知事 (地方自治法 (昭和22年法 。律第67号)第252条の19第1項の指定都市 (以下 「指定都市」という。)にあっては、その長とする。以下この節、第25条第1項及び第2項並びに第4節において同じ。)の登録を受げなければならない。
2 前項の登録を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した申請書に環境省令で定める書類を添えて、これを都道府県知事に提出しなければならない。
一
氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては代表者の氏名
二
事業所の名称及び所在地
三
事業所ごとに置かれる動物取扱責任者 (第22条第1項に規定する者をいう。)の氏名
四
その営もうとする動物取扱業の種別 (販売、保管、貸出し、訓練、展示又は前項の政令で定める取扱いの別をいう。以下この号において同じ。)並びにその種別に応じた業務の内容及 び実施の方法
五 主として取り扱う動物の種類及び数
六
動物の飼養又は保管のための施設 (以下この節において「飼養施設」という。)を設置しているときは、次に掲げる事項
イ
飼養施設の所在地
ロ
飼養施設の構造及び規模
ハ
飼養施設の管理の方法
七
その他環境省令で定める事項
1.概要
動物取扱業を行うにあっては、事前登録をしなければならないこととした。
動物取扱業は、従来届出制であったが今回の改正で登録制にした。
2.対象者
動物取扱業者、動物取扱業の登録を受けようとする者
3.解釈
1)第1項
(1)制定の趣旨
悪質なペットショップなどに関するトラブルが多発し、社会問題化したことが契機となって本条が制定された。
届出制では、いわば放任に近い状態であったので、登録制にして行政が監視できるようにするとともに法令遵守義務などを定めてトラブルの回避を図った。
(2)本条の動物
哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するものである。
畜産農業、試験研究用などは含まれない。
魚類、昆虫類も含まれない。
(3)動物取扱業
動物取扱業とは、次の業務をいう。
動物の販売、保管、貸出し、訓練、展示の業務である。
販売に属する動物取扱業者としては、ペットショップ、繁殖者(自ら雑誌・ネット広告で販売する者、業者などに卸す者)、インターネットで繁殖情報のサイトを開設し繁殖者や購入者から仲介手数料を取る者などが該当する。
保管に属する動物取扱業者としては、ペットホテル業者、ペットシッターなどが該当する。動物病院での入院はこれには該当しない。
貸出しに属する動物取扱業者としては、ペットレンタル業者、映画やコマーシャル撮影用のタレントペットの貸出し業者などが該当する。
訓練に属する動物取扱業者としては、警察犬訓練所業者、しつけ教室業者、出張訓練業者などが該当する。
展示に属する動物取扱業者としては、動物園、水族館(哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するものがいれば)、乗馬施設、動物を使ったサーカスなどの業者が該当する。
(3)登録の申請先
登録の申請先は、事業所の所在地を管轄する都道府県知事・政令指定都市の事業所の所在地を管轄する市長である。
政令指定都市は都道府県に準じた扱いになり、市長に申請することとなる。
(4)登録
従来は届出制であったが今回の改正で登録制にした。
悪質な行為について、従来の届出制では、違反者に対しての業務の取り消し、業務の停止がなく、また届出の際に審査の要件がないなどで、悪質行為が多発して社会的問題となっていた。
そこで、登録制に移行させ、悪質業者には業務の取り消し、業務の停止の処分ができるようにするとともに、申請の際には、飼養する施設や管理の方法に一定の基準を設定し、それを審査することができるようにした。
また、この要件は、登録時のみでなく継続して備わっていることが必要である。(規則19条1項)
2)第2項
(1)記載事項
提出書類には次の事項が記載されていることが必要である。
①氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては代表者の氏名
②事業所の名称及び所在地
③事業所ごとに置かれる動物取扱責任者 (第22条第1項に規定する者をいう。)の氏名
④その営もうとする動物取扱業の種別
(販売、保管、貸出し、訓練、展示又は前項の政令で定める取扱いの別をいう。以下この号において同じ。)並びにその種別に応じた業務の内容及び実施の方法
⑤主として取り扱う動物の種類及び数
⑥動物の飼養又は保管のための施設を設置しているときは、次に掲げる事項
イ 飼養施設の所在地
ロ 飼養施設の構造及び規模
ハ 飼養施設の管理の方法
但し、実務上の取り扱いでは特に独立した飼養施設を設置していなくても記載するのが一般的である。
(2)環境省令で定める書類
記載事項のほか環境省令で定める書類を添えなければならない。
環境省令で定める書類とは次のものをいう。
① 法人にあっては、当該法人の登記事項証明書
②
申請者(申請者が法人である場合にあっては、その法人及びその法人の役員)が法第12条第1項第1号から第5号までに該当しないことを示す書類
③
事業所ごとに置かれる動物取扱責任者が法第12 条第1項第1号から第5号までに該当しないことを示す書類
☞法第12 条第1項第1号から第5号までとは
(申請者および動物取扱者に同一の欠格要件となる)
1号 成年被後見人若しくは被保佐人又は破産者で復権を得ないもの
2号 この法律又はこの法律に基づく処分に違反して罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
3号 第19条第1項の規定により登録を取り消され、その処分のあった日から2年を経過しない者
4号 第10条第1項の登録を受けた者 (以下
「動物取扱業者」という)で法人であるものが第19条第1項の規定により登録を取り消された場合において、その処分のあった日前30日以内にその動物取扱業者の役員であった者でその処分のあった日から2年を経過しないもの
5号 第19条第1項の規定により業務の停止を命ぜられ、その停止の期間が経過しない者
☞第19条第1項とは
都道府県知事は、動物取扱業者が次の各号のいずれかに該当するときは、その登録を取り消し、又は6月以内の期間を定めてその業務の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。
一 不正の手段により動物取扱業者の登録を受けたとき。
二 その者が行う業務の内容及び実施の方法が第12条第1項に規定する動物の健康及び安全の保持その他動物の適正な取扱いを確保するため必要なものとして環境省令で定める基準に適合しなくなったとき。
三 飼養施設を設置している場合において、その者の飼養施設の構造、規模及び管理の方法が第12条第1項に規定する飼養施設の構造、規模及び管理に関する基準に適合しなくなったとき。
四 第12条第1項第1号、第4号又は第6号のいずれかに該当することとなったとき。
五 この法律若しくはこの法律に基づく命令又はこの法律に基づく処分に違反したとき。
☞ 第12条第1項第1号、第4号又は第6号とは
1号 成年被後見人若しくは被保佐人又は破産者で復権を得ないもの
4号 第10条第1項の登録を受けた者 (以下 「動物取扱業者」という)で法人であるものが第19条第1項の規定により登録を取り消された場合において、その処分のあった日前30日以内にその動物取扱業者の役員であった者でその処分のあった日から2年を経過しないもの
6号 法人であって、その役員のうちに前各号のいずれかに該当する者があるもの
④見取図 規則
次に掲げる設備等の配置を明らかにした飼養施設の平面図及び飼養施設の付近の見取図を添付しなければならない。
見取図を書く場合は、これらの位置を確実に示すことが必要である。また、無いものについては記載しない。
イ
ケージ等(動物の飼養又は保管のために使用するおり、かご、水槽等の設備をいう)
ロ
照明設備(営業時間が日中のみである等当該設備の必要のない飼養施設を除く)
ハ 給水設備
ニ 排水設備
ホ
洗浄設備(飼養施設、設備、動物等を洗浄するための洗浄槽等をいう)
ヘ
消毒設備(飼養施設、設備等を消毒するための消毒薬噴霧装置等をいう)
ト 汚物、残さ等の廃棄物の集積設備
チ 動物の死体の一時保管場所
リ 餌の保管設備
ヌ 清掃設備
ル 空調設備(屋外施設を除く)
ヲ
遮光のため又は風雨を遮るための設備(ケージ等がすべて屋内にある等当該設備の必要のない場合を除く)
ワ
訓練場(飼養施設において訓練を行う訓練業(動物の訓練を業として行うことをいう)を営もうとする者に限る。)
(施行規則第2条2項)
(3)その他の書類の提出
都道府県知事は、規則で定められた書類の他、必要と認める書類の提出を求めることができる。
施行規則に定めた書類では事実の確認ができない場合に、当該申請において状況の確認に必要と思われる書類の提出を求めて事実を確認するためである。
(施行規則第2条3項)
(4)その他省令で定める事項
環境省令で次の事項を記載事項として定めている。
この事項も併せて記載しなければならない。
①営業の開始年月日
②法人にあっては、役員の氏名及び住所
③事業所及び飼養施設の土地及び建物について事業の実施に必要な権原を有する事実
④事業所以外の場所において、顧客に対し適正な動物の飼養及び保管の方法等に係る重要事項を説明し、又は動物を取り扱う職員の氏名
(施行規則第2条4項)
(5)申請の様式
様式第1による申請書を提出して行う
(施行規則第2条)
☞様式第1
3)登録証について
(1)登録証の交付
都道府県知事は、法第10 条第1項の登録をしたときは、申請者に対し様式第2による登録証を交付しなければならない。
確かに登録されているという事実を証明するためである。
(施行規則2条5項)
動物取扱業者は、この登録証を事業所に掲げる義務を負う。
(法18条)
☞様式第2
(2)登録証の再交付
動物取扱業者は、登録証を亡失し、若しくはその登録証が滅失したとき又は法第14 条第2項の規定に基づく届出をしたときは、登録を受けた都道府県知事に申請をして、登録証の再交付を受けることができる。
事業所に掲げる義務を負っているので、亡失・滅失したときは速やかに再交付申請をする必要がある。
(施行規則2条6項)
☞様式第3
(施行規則2条7項)
(3)登録証を亡失したとき
登録証を亡失したときは、書面をもって遅滞なく、都道府県知事に届けなければならない。
但し、再交付申請をしているときは必要でない。
再交付申請は、亡失していることが前提の申請であるからである。
(施行規則2条8項)
(4)登録証の返納しなければならないとき
登録証を有している者は、次に掲げる場合は、その日(登録を受けた者が死亡した場合にあっては、その事実を知った日)から起算して30 日を経過する日までの間に、登録証をその交付を受けた都道府県知事に返納しなければならない。
但し、法第16 条第1項各号に該当するにいたったときは、返納者は、相続人、消滅した法人を代表する役員であった者又は破産管財人若しくは清算人となる。
効力を有しなくなった登録証を放置しておくと、それを見て信用した善意の第三者に不測の損害を与える可能性があるからである。
① 登録を取り消されたとき。
② 法第16 条第1項各号のいずれかに該当するに至ったとき。
☞ 法第16 条第1項各号及び返納者
Ⅰ 死亡した場合は その相続人
Ⅱ 法人が合併により消滅した場合は その法人を代表する役員であった者
Ⅲ 法人が破産手続開始の決定により解散した場合は その破産管財人
Ⅳ 法人が合併及び破産手続開始の決定以外の理由により解散した場合は その清算人
Ⅴ その登録に係る動物取扱業を廃止した場合は 動物取扱業者であった個人又は動物取扱業者であった法人を代表する役員が返納する。
③ 第6項の規定により登録証の再交付を受けた後において、亡失した登録証を発見し、又は回復したとき。
これは旧登録証を返納する。再交付を受けた登録証が現に効力を有する登録証となる。
(施行規則2条9項)
4.罰則
1)次の各号のいずれかに該当する者は、30万円以下の罰金に処する。
一
第10条第1項の規定に違反して登録を受けないで動物取扱業を営んだ者
二
不正の手段によって第10条第1項の登録 (第13条第1項の登録の更新を含む)を受けた者
三 第19条第1項の規定による業務の停止の命令に違反した者
四 第23条第3項又は第32条の規定による命令に違反した者
(第46条)
2)両罰規定
法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第44条から前条までの違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。
(第48条)
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